No.14「春と鬱」の巻(2002/6/10)

 こんにちは皆さん、ご機嫌麗しくお過ごしですか?日本はもう限り無く夏に近いのかな?イギリスはまだまだ春真只中という感じですよ。いたるところで花が咲き乱れ、鳥はさえずり、公園のかもは子を産み育て、日は一日一日長くなり、たまに寒さがぶりかえしたりもするけれど、確実に暖かい日が増えてきてる。そんな日々を過ごしています。

ところで、私の友達に鬱病の子がいるます。彼女によるとこの春の季節が一番辛いらしい。空が青くて花が咲き恋人達が公園でじゃれあうようになると、もう世の中で不幸なのは自分だけなのねって思えてきてすご〜くすご〜く落ち込むらしい。ということで、イギリスの長〜い春は(なんといっても夏が短いからね)彼女にとっては地獄の苦しみなんだそうです。

そんな話を聞いて、あら大変ね〜って思ってたら、一昨日、私自身が理由もなくストンと心が悲しい溝にはまってしまいました。まあ、私の場合、こんなことたまにしか起きないので(年に1〜2度ぐらいかな)、「ああ、なんだかこの懐かしい感覚。この何ものか得体の知れない物悲しい感覚.....これが諸行無常とか人生のはかなさとかいうものなのかもね、きっと」って、ある意味、たいへん悲しい気持ちになりながらも、その感覚をしっかり味わって、実は楽しんでいるのだけれど。

それにしても、昔からたま〜にそこはかとなく悲しみを感じるってことあったよなあ。今でもよく覚えてるのは小学生の時のとある夏の日、洗濯物を干そうと思って物干にのぼったら、凄〜く空が青くかった........私が子供の頃の東京の下町は(私の家は神田にありました)、当時車のガソリンの質とかが悪くて排気ガスがかなりひどかったのでしょうか、光化学スモッグが夏になると毎日のように出て、晴れた日でもちょっと薄曇りっていう感じが多かったんです。でも、その日は凄く空が青く晴れてて、雲が一つもないの。それで、なんて空が青いんでしょうって、吸い込まれるように見上げてたら、そうしたら急にストンと落ちた。(物干から落ちたんじゃなくて、心がだよ)なんだかもの悲しくなちゃって.......晴れた空見たら嬉しいことなのに、何で理由もなくこんなに悲しいんだろうって、30年近くたった今でも鮮明に覚えているぐらい、その時本当に悲しくて、そしてそのことが本当に不思議に思えたのでしょう。

生まれたばかりの赤ちゃんは、感覚が未分化で、「快」か「不快」かの感覚しかなく、「不快」の時に泣いちゃうんだということを昔学校で習ったけれど、今でも私の感覚のどこかに未だ分化していない手付かずの部分があって、そこがたまに刺激されて、不快....なんとなく泣きたくなっちゃう悲しみなんてものを感じるのかもね。

私の鬱病の友人は、鬱になるのはホルモンの関係よって言われているようですが.......私の場合は年に1〜2回、2時間ぐらいホルモンの分泌が不規則になるってこと?.....これってなんかへんだよ。

外国に旅に出て知らない文化に触れたり、海にもぐって今まで見たことのない魚を見つけたり、夜空を眺めて夜空の向こうには何があるんだろうなんて歌の台詞のようにふと考えてみたりすると、まだまだ自分の知らないことが外の世界にたくさんたくさんあるんだなあって感じるけれど、今回みたく、自分の心の中に目を向けてみて、なんだか得体の知れない不思議な悲しさみたいなものがあるってのがわかると、あらあら、こんなすごく身近なところにも(というか自分自身の中なのに)分からないことがあるなんてね、ほんと、私のなあんにも知らないで生きてるのねえって思うわ。

それにしても、たまにこういう気持ちになった時にこそ、鬱病と診断された友人が精神的に大きな負荷を抱えているというのが分かるよ。私はごく稀にしかこういう感覚に陥らないので、シチュエーションを楽しめちゃったりするわけですが、彼女はひどい時は月の半分ぐらい、毎日悲しくてただただ悲しくてどうしようもなくなるらしい。それはすごく辛いよね。

ところで、一昨日は悲しくなってしばらくして何をしたかというと、血行をよくするとこの悲しみは消えるのかな?とか思って、白ワインを飲みながらぴりりと辛い柿の種を食べてみました。そうしたら、柿の種の小さな袋を食べた辺で、自然と悲しみが消えました。私の悲しみなんて、所詮そんなもんなのね。お友達に、辛くなったら、ワインを飲んで柿の種を食べるといいかもよってアドバイスしたら、ふざけるなっておこるかなあ......おこるだろうなあ。

ということで、今回はロンドンで春と鬱を感じるまめ子でございました。

では。

まめ子@London
 
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