ジダン・インタビュー「精一杯生きるということ」
(Number PLUS October2001/文芸春秋発行/文:リカルド・セティオン/翻訳:中谷綾子・アレキサンダー)より抜粋

ーその精神力の強さ、冷静さの源は何?
ジダン 神様を信じていることですかね… 僕の父は、僕以上に神の存在を意識していました。その父と毋から、世の中を見極める力を与えてもらった。 行動を起こす前に、一瞬立ち止まって考えること、落ち着いて考えることを学びました。必要最低限の信仰心… 僕は運命を信じています。生あるものすべてには、必ずその存在意識があり、神が与えし「運命」、そして、遂行すべき「目標」があると思っています。全て…父の言葉から受け継いだ思いですね。
ーそれほどまでに、ジダンに影響を与えたお父さんにとても興味があります。
ジダン 父はとても仕事熱心な人でした。警備員でしたので、ほとんど夜は帰宅せず、日中に寝ていました。とてもシンプルで、とても真面目な人だった。彼にとって、最も大切なことは、 自分の子供たちに不自由なく暮らせる良い環境を与えること、そして、何よりも僕たちが謙虚であることを願っていました。



 父は子供が自立すること、生涯をかける目標に出会うことを願っていました。その意味では、父は今幸せで、僕らを誇りに思ってくれてます。でも、父以上に、僕は父の息子であることを誇りに思っている。「ジダン」に、全てを教えたのは「ジダン」の父なんですよ。父の言葉は、常に胸の中にあるのです。毎試合ごとに、父の言葉を思い出します。



★コメント

 スペインのレアル・マドリードへ史上最高額約80億円で移籍した直後のジダンへのインタビューの一部。
「生あるもの全てには、神が与えし“運命”“目標”がある…」。ある精神的境地に達しているサッカーの英雄の素顔をかいま見ることができる。