オーストラリア大学院留学プログラム

再就職先は、オーストラリアで学んだ通訳翻訳のスキルと
国際感覚がフルにいかせる職場

大学:クイーンズランド大学
専攻:通訳翻訳
留学期間:2010年2月〜2011年12月

1975年生まれ、沖縄県出身。日本の大学を卒業後、通訳・翻訳の仕事に従事しながら大学院留学の準備を行う。2010年2月より、オーストラリアにある名門クイーンズランド大学の通訳翻訳修士課程(MAJIT:Master of Arts in Japanese Interpreting and Translation )で2年間就学。クイーンズランド大学では優秀者に付与される奨学金を獲得した。現在は日本国内の大学で勤務中。


毎週、フォーラムで入っていた同時通訳ブースで、クラスメートの由美さんと。最新の通訳機器を備えていて、国連や欧州連合と同じ仕様になっています

フォーラム直前の様子。左端のパートナーのクラスメートと15分交代で、逐次通訳をします。僕の右手には外部から招いた講演者、その隣が1年目の学生でMCを第2言語で行います(オーストラリア人なら日本語で、日本人は英語で)

試験が終わり、セメスターが終わった日にキャンパス内にある「ピザカフェ」で、クラスメートとお疲れさま会を開いたときのもの。セメスターが終わると、いつもここでピザとビールを飲みました(僕は飲めないのでスプライト)。ここのピザはとてもおいしく、いろんな種類のピザを揃えています。学生証を見せたら1枚10ドル(約800円)に割引してくれます

滞在していた学生寮「INTERNATIONAL HOUSE」の友人と大学からシティーキャットに乗ってサウスバンクに出かけたときの写真。写っているのはオーストラリア、ドイツ、シンガポール、マレーシア、タイ、インドからの友人。寮には、数十カ国からの学生200名が生活していて、お国なまりの英語は通訳者にとっては常にくせ者ですが、しばらく一緒に生活するとだんだんと慣れてくるものです(笑)。世界中に一生ものの友人がたくさんでき、今でもFacebookやSkypeを通して繋がっています

寮の友人たちが卒業式に来てくれました。西洋の卒業式は大々的で、TVに出るような有名人が来て講演したり、ハリーポッターのような衣装を着て、すばらしい音楽が流れたり。「卒業した!やったー」と心から感じることのできる感動的な卒業式でした

Q:留学前はどんな仕事をされていましたか?

A:法務省所管の拘置所で、犯罪者に係る通訳・翻訳・渉外業務を11年ほど担当していました。

Q:留学して通訳・翻訳を学ぼうと思った理由は?

A:すでに日本の通訳学校に通っていましたし、実務もこなしていましたが「もっとじっくりと勉強したい、スキルアップしたい、海外で生活してみたい、大学院で勉強したい」という気持ちがいつも心のどこかに沸々としていました。

Q:留学先をオーストラリアにしたのは?

A:大学院で日英言語ペアの通訳・翻訳が学べるところは、アメリカ、イギリス、オーストラリアという選択肢がありますが、その中から、暖かくて物価が安く、治安の良いオーストラリアにしました。多少、リゾート気分もあったのかもしれません(笑)。親日的で、日本と経済的な結びつきが強く、高校で日本語を学ぶなど日本語学習に熱心で、通訳者翻訳者の教育、社会的システムも確立しています。留学前からオーストラリア人の友人がいて、オーストラリアに対してとてもポジティブな印象を持っていました。

Q:クイーンズランド大学を選んだ理由は?

A:ネットや雑誌でリサーチし、AIICから通訳養成機関として、世界で第2位(1位はスウェーデンのストックホルム大学で、日英のペアはありません)の評価を得ているクイーンズランド大学のMAJITプログラムをみつけました。MAJITはオーストラリアの国家資格であるNAATI(オーストラリアの通訳翻訳国家試験)のレベル4を提供する唯一のコースで、通訳と翻訳の両方を学べる2年間のプログラム。じっくり学びたかった自分の目的に合致していました。   州立大学なので他の大学に比べ学費が安く、研究を重視するオーストラリアの大学連合 Group of Eightや国際的な大学提携 Universitas 21研究機構のメンバーであり、ノーベル賞受賞者も輩出しています。タイムズハイヤーエデュケーションでも世界第41位にランクされるなど、オーストラリアだけではなく世界的に有名な学校。講師の方々が実際に一線で活躍されている会議通訳者、翻訳者で、豊富な経験をお持ちだったのも理由です。

Q:通訳翻訳のコースではどんな内容を学ぶのでしょうか?

A:1年目は主に通訳翻訳に関するバックグラウンド科目と理論が中心で、一般的な内容の翻訳と逐次通訳を学びます。2年目からは同時通訳を訓練し、通訳、翻訳ともに徐々に難易度の高い内容に移っていきます。2年間で政治、経済、科学技術、医薬、法律、特許など、通訳翻訳の実務で発生するほぼすべての専門領域をカバーし、通訳と翻訳、理論と実践を徹底的に学べます。

Q:具体的な科目にはどんなものがありますか。

A:1年目の1セメスターでは、パプリックスピーキング、テキスチャル・スキルズ、通訳翻訳理論、翻訳のクラスがあります。  パブリックスピーキングのクラスは週2回。さまざまなテーマでスピーチを書き、クラスの前で発表します。発音や声のトーン、スピード、文法のミス、立ち振る舞い、表情、所要時間まで細かく指摘してもらえ、これが後の通訳クラスのベースとなります。期末試験ではその場でテーマを与えられ、即興でスピーチをして評価を受けます。人前でのスピーチは苦手でしたが、このクラスのおかげで度胸がつきました。  テキスチャル・スキルズでは、第2言語での速読の技術を学びます。通訳は短時間で膨大な資料に目を通す必要があり、速読の技術も後の通訳の準備に役に立ちました。  理論のクラスでは、通訳学、翻訳学を学べます。エッセイを書いたり、グループプレゼンテーションをしたり、毎週予習のためにテキストの1チャプター読んだりと、しんどいクラスでしたが、海外の大学で学んでいると実感できる、個人的には好きなクラスでした。  1年目の2セメスターから通訳のクラスが始まり、2年目から同時通訳をはじめ、さらにフォーラムのクラスでは週に一回、大学内外から様々な専門領域をお持ちのゲストスピーカを招き、一般に公開された講演会が行われます。そこで、2年目の学生が逐次または同時で通訳を行います。1年目の学生もMCやオーディエンスとして参加します。通訳方向は日英と英日が半々くらいになっています。講演の後には、オーディエンスからの質疑応答もあり、それも通訳します。翻訳は2年目からテクニカルな内容になり、リサーチに多くの時間が必要になります。毎日、その準備や復習に追われて、完全に勉強づけの生活になります。授業で取り扱う内容は、実際の仕事に即した内容になっています。 授業の様子はこちら

Q:クラスメイトにはどんな人たちがいましたか?

A:英語ネイティブと日本語ネイティブが半々くらい。オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、日本、中国の方がいました。日本語から英語に訳す授業では、英語ネイティブのクラスメートの表現から学ぶことができました。授業の復習もネイティブのクラスメートと一緒なので、日本人同士では手の届かないところまで勉強できました。日本では英語ネイティブがいないことが多いので、この点がオーストラリアに来て本当に良かったと思うところです。年齢は学部を出てすぐの方から40代の方までと幅広いですが、30歳前後で数年、社会経験のある方が多かったです。

Q:教授陣の印象は?

A:教授陣はInternational Association of Conference Interpreters (AIIC)の会員で、NAATI level5保持者のYuki Sayeg先生をはじめ、第一線で活躍されている先生方ばかりです。クラスではビシッと指摘していただきますが、少人数制なので、アットホームな環境で、きめ細かい指導を受けることができました。先生方も外国の方と日本人の方が半々くらいで、日→英のクラスは英語ネイティブの先生が、英→日のクラスでは日本語ネイティブの先生が指導してくださいます。これも日本の学校と違うところだと思います。

Q:苦労したレポートや課題、授業はありましたか?

A:最初の理論の講義で、先生が「翻訳は人類で2番目に古い職業と言われていますが、翻訳学は新しい学問領域です」と切り出して、爆笑したのを思い出します(笑)。その理論のクラスでエッセイを3本書きましたが、どれも産みの苦しみがありました。英語で書くだけでなく、プレゼンする技術も必要でしたし、通訳、翻訳の授業の予習復習と平行して本もたくさん読まなければならないので、時間との戦いでした。日本の通訳学校では理論を学ぶことはないので、学術的な理論が学べるのも海外で学ぶアドバンテージの一つだと思います。オーディエンスの前で通訳をする時は事前にリサーチして資料に目を通し、単語リストを作り、それを一夜漬けで暗記するといった感じで、本当の会議通訳のような設定でした。

Q:通訳翻訳をオーストラリアで学ぶメリットは何ですか?

A:日本では日本人の先生と日本人のクラスメートしかいませんが、オーストラリアなら講師陣と同級生に英語ネイティブがいて、英語もよりスムーズになりますし、理論が学べて、修士号の学位も得られます。また、オーストラリアは移民の国なので、グローバルな社会とはどういうものかということを肌で感じることができます。

Q:NAATI(オーストラリアの通訳翻訳国家試験)とはどんな試験ですか?

A:噂どおりの難関でした。通訳は日英、英日と2日に分けて試験があります。1週間前にトピック(科学技術、経済、外交に関するもの)のみが与えられ、リサーチして準備します。そして24時間前にシーンのスクリプト(10ページほどのスピーチ原稿)をもらいます。このシーンは同時通訳でした。この他にもアンシーン(原稿なしの通訳)が2題(逐次と同時)があります。翻訳も1週間前にトピックが与えられ、リサーチして準備します。共通問題(政治)1問と、法律、医薬、科学技術、経済から2つを選び、合計3題を8時間以内(ランチ、休憩時間込み)で翻訳します。

Q:この試験のためにどんな準備をしましたか?

A:高い語学力、聴解力、内容をきちんと把握するだけの知性や知識、長い情報を一定の期間、保持できるリテンション力、正確な表現力、瞬発力、集中力、持久力、極限状態でのメンタル力が必要となります。翻訳も制限時間があり、内容も高度なため、効率的に勉強する必要があります。また適切な表現をするには入学前の読書量も関係すると思います。これまでやってきたことの総決算という感じでかなり疲れます。試験後1週間はただ何もしないで過ごしました。「もう通訳と翻訳はしたくない」と思えるほどでした(笑)。

Q:就職活動はいつ頃からどのように行いましたか?

A:本格的に始めたのは卒業してからです。オーストラリアにいたので、就職活動はインターネットで行いました。通訳翻訳関係の求人を3つほどみつけて応募したところ、2カ所からすぐにお返事をいただきました。雇用先が来週にでも来てほしいとのことだったのでオーストラリアの家を引き払い、連絡のあった4日後には帰国しました。在学中に先輩から「仕事はいくらでもあるから勉強だけに専念して大丈夫」と言われていましたが、それでも、卒業後の仕事のことはとても心配していました。就職活動には数ヶ月はかかるだろうと思っていましたが、始めてすぐに面接の連絡をいただき、こんなにもトントン拍子で事が運ぶのだなと驚きました。

Q:新しい勤務先について、教えてください。

A:大分県別府市在の立命館アジア太平洋大学(APU)で、研究活動を支援する通訳翻訳業務を2012年1月から始めました。大学法人 立命館が2000年に開学した日英2言語による教育、そして学生と教授陣の約半数が外国籍というのが特徴の、日本では珍しいインターナショナルな大学です。学生のほとんどが驚くほど流暢な日本語と英語を話します。オーストラリアに行く前に、ここで勉強していたらなあと思うほど恵まれた環境です。 リサーチオフィスに配属され、セミナーの開催、ジャーナルの編集、公式ウェブサイトの記事のアップデート、海外学会発表、フィールドリサーチ、研究助成金等に係る翻訳・通訳業務を行っています。オーストラリアで学んだ通訳翻訳のスキルと国際感覚がフルに生かせる仕事につけて、とてもラッキーだったと思っています。

APUについて

Q:クイーンズランド大学の通訳翻訳留学を目指す方にメッセージをお願いします。

A:自分の経験から言うと、しっかりと英語力をつけて入学することが大切だと思いました。そうでないと入学後に苦しい思いをします。特にリスニング力や語彙力はすぐには伸びないので、通訳翻訳の勉強をしながら、同時に英語そのものの勉強をするのは時間的に難しいと思います。授業の予習復習をしっかりすることが上達の秘訣ですが、すべてを完璧にしようとすると時間的にも精神的にも追い込まれてしまうこともあります。時には息抜きをするなど、心に多少の「あそび」も必要かもしれません。クラスメートのひとりが「入学試験に"耐性テスト"も加えたほうがいい」と言っていました。それくらい、語学力はもちろん、精神力も要求される場所だと思います(笑)。

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