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No.5「むっつり効果」(2001/9/4)
「男は黙ってサッポロビール」なんてCMを昔見た事があるが、得てして日本人はそして、特に男性は無口を美徳として来た文化がある。
男性や、地位、名誉のある人はむやみやたらにベラベラ喋らない事を要求されてきた気がする。寡黙でニヒルは格好がいいらしい。女性にしたって、「慎み深い」なんて言われたりする。
けれどしかし、英語文化圏はそういう訳にはいかないものなのである。あちらで事情の説明をし、こちらで権利の主張をし、家庭内にいたっては黙ってお茶が目の前に出てくるなんて現象は、逆立ちしたって起こるはずがない。
「私はコーヒーが飲みたいの。私の為に美味しいコーヒーを入れてくれないかしら?ねぇダーリン」なんてことをいちいち言わなければならない。出て来たコーヒーはインスタントだって、「なんて美味しいのかしら。ありがとうスィートハート」と返事をするものである。
当然逆のパターンもありうる。「僕の可愛いリトルバード。僕の為に紅茶を作ってくれないか」可愛いリトルバードは永年連れ添った、体重100キロのおばさんだったりする。何ゆえにリトルバードなのか、この英語の不的確性には首をかしげるばかりなのだが、人間関係を潤滑にするため、ここちよい自分の生活を守るためにはこれも一つの生活手段と呼ぶ外ないという事なのだろう。
日本には、やたらと口を聞いてはいけない職業もあるようだ。例えば、高級寿司屋の職人さん。こちらから注文さえしてはいけない様な店さえあるらしい。世界中でレストランの客がシェフの顔色を伺いながら口もきけないなんて一流レストランが存在するのだろうか?
そしてお医者さん。「どうしました?」と聞かれ「風邪みたいなんですが」と答え
て、「それは医者のきめる事だ。あなたは医者じゃないのだから症状を答えればいいだけだ」と叱られた経験がある。治療方法や薬についてもあまり深く聞いてはいけないらしい。
こちらの医者は、診察に行くと「僕の名前はジョン。初めまして。」なんて握手を求められたりする。ジョンの背中のシャツの裾がパンツからはみ出ていることもある。「なに食中毒だって?そりゃ苦しいよね。僕も前にタイであたって。。。」なんて話しを聞かされることだってある。
古来から日本には、地位や名誉のある人や特殊な職業を持つ人は「むっつり」する事で威厳を保ち、一般市民の敬意と尊厳を得ていたという「むっつり効果」というものが存在した。しかし、英語文化圏で「むっつり」することは、人間関係の基本理念をもとから断つ拒絶の姿勢。卑怯ものか、やましい気持ちのあるものの態度である。当然家庭内でお茶を作ってもらえるチャンスは皆無である。まあそういう人に家庭はないかもしいれないが。
毎日毎日、冴えない英語で受け答え、口腔上顎筋肉のみすこぶる発達し、こうしてますます「しゃべり」になっていく。私が「しゃべり」なのはこういう理由からだ。必然性の問題と考えて頂きたい。
フローレンス@NZ
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