No.2「人のふり見て。。。のお話」(2001/6/25)

国内線のターミナルで見かけた光景である。

 女子トイレを出ようとした時、ある有名ツアー会社のバッジを付けた日本人グループのおばさま方がドヤドヤと入って来た。一列に行儀良く並び前方から空いたトイレに入っていった。すると今度は中国人グループと思われるおばさま方の一団がドカドカやってきて、日本人グループをしり目に各ドアの前に並んだのである。日本人おばさま軍団は「ま〜失礼な。マナーを知らない人達は困るのよ」と口々に文句を言いながら先を越されたまま立ち尽くしていたのである。
 しばらく様子を伺っていると、今度は中国人一団がすごい勢いで去ってゆき日本人グループのおばさま方が出ていこうとしていた。先頭の人がドアを開け、次の人も通り抜けられるようにドアを手で押さえ、次々とおばさま方は出ていったのである。が、グループ最後尾の人は後続の日本人はいないと
ばかりに、そのまま振り返りもせず出て行ったのである。当然ドアは後続の人の為に手で押さえて開けて待っていると思っているニュージーランド人の女性の鼻先でバタンと閉まる事になる。「まったく、アジア人は。。。」と彼女はため息をついた。

 私と、日本人ツアーグループは一緒のフライトらしかった。

 搭乗ゲートでしばらく待つと、何やらアナウンスがあり「現在この飛行機に搭乗する筈のフライトアテンダントが病気で、最寄りの空港から替わりのアテンダントが一生懸命車で当空港へ向かっております。なにしろ一生懸命走っておりますが、車は飛行機にくらべて遅い。 よって今しばらくお待ち下さい。
車より、断然速い当航空会社を今後もどうぞ宜しくお願いします」と言ったのだ。とは言っても、何しろ最寄りの空港はここから200キロ以上はあるのである。
こんな時にニュージーランド人は慌てない。代理人が来るまで飛ばないものは飛ばないのだ。苦笑さえしろ文句は言っても始まらないのである。ひょうきんな現地のおじさんが「その速い飛行機で飛んでくればいいのにね」と言うと、「彼女は乗り遅れた模様です。(当然ジョーク)」などとやっているのだからどこまでも呑気である。

 呑気ですまされないのが日本人ツアーグループだ。ツアー料金は分単位での支払いと信じて疑わないとばかり、「何分待たせるつもりだ」「到着後の市内観光が出来なく成ったら料金は返ってくるのか?」と口々に添乗員らしい若い男性を責め立てている。添乗員の男性は平身低頭して謝ると同時に、航空会社の職員にさらなる詳しい事情説明を要求していたのである。(それ以上の事情なんてないのだが。。)
 隣に座っていたおじさまが言い出した。「西洋国なんて、サービスをするなんて気
持ちはかけらもないね。時は金なりなんて勤勉な日本の諺を教えてあげたいね。時間を守るなんてことは、人間同士の最低のルールじゃないか。だいたい説明するにしたって、本当の事をいっちゃあならねーだろう。嘘も方便なんだからさ」すると、今どきめずらしい前歯に金歯のおばさまが、「あたくしなんて、ローマではもっとひどい目にあいましたのよ。」かくかくしかじか海外旅行でひどい目にあった大自慢大会になったのだ。そして最初のおじさま曰く、やっぱりアジアの勤勉さにまさるものはないよな。(皆一同にうなずく)

「おねーさん。あんたは日本人かい。この国に住んいるの? 大変だーねー。なに、こんな事は日常茶飯事なんだって? 日本ってのはそう考えると良い国だね。何しろサービスの質が違うよ。日本はいいねー食べ物も美味しいし。マナーもいい
し。。。。」

それから一時間後、まだ一生懸命車で空港へ向かっているはずのアテンダントは現れない。空港職員にインド人と思わしき男性が「Time is money」と文句を言っている。(だとすれば、どこの諺なんだか)
向こうのシートでは、上品そうなニュージーランド人の年輩の御夫人がハンカチでブーンと鼻をかんで、それをポケットにしまった。(ハンカチは鼻をかむ為のものとして存在する)

マナーなんて五十歩百歩。人のふり見て我がふりなんて直らないものなのである。

フローレンス@NZ
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