留学中に本気の起業―サンフランシスコで決断した自分の生きる道

ICC国際交流委員会のIBPサンフランシスコ州立大学プログラムの三浦と吉田です。
今回は、今学期に現地で起業をしたIBP生達にインタビューをしてきたので、その内容をここに掲載したいと思います。

IBPプログラムは実践的なビジネススキルの習得に特化した留学プログラムであり、ビジネス的思考、起業等のアイデアを持っている人が多く在籍しています。これまでも、留学中に知識を付けたり、インターンシップを通してビジネスの現場に直接触れた後に日本に帰国して、会社を立ち上げた人も多くいました。
しかし、今回ご紹介するIBP生達はなんと留学中に起業することに成功したという珍しい例なのです。
起業したいけどアイデアの出し方がわからない人、起業案はあるけれども実行の仕方がわからない人、新たなビジネス形態に興味がある人等、ビジネス分野に興味がある人は是非最後まで読んでみてください。きっと起業の参考になりますよ!

企業名は株式会社A-Nexus

このビジネスはアスリートと栄養士を結びつけるものだから一文字目のAはAthleteのA。NはNutritionistのN。そして、AとNは大文字にしてアスリートや栄養士であるという人を強調し、ラテン英語のNexus、繋げるという意味をかけました。だからアスリートとニュートリショニストを繋げるというコンセプトを意味でこの企業名にしたそうです。

今回ご紹介する起業したIBP生達は、3名。写真の右側から起業案を提案したCEOの大熊啓介(Keisuke Okuma)さん、熊澤杜夫(Morio Kumazawa)さん、中村圭地(Keichi Nakamura)さんです。大熊さんがIBPサンフランシスコ州立大学プログラム(アドバンスコース)で知り合った熊澤さんと中村さんを誘ったのが起業の始まりです。大熊さんは彼らを誘った経緯について、自分と正反対の考えを持つ人物を入れたかったと語っています。熊澤さんは感覚で生きているために自由な発想の持ち主である点。中村さんはきちんとした性格なので、仕事をしっかりとこなすことができるので信頼がおける点がこの二人を選んだ理由だそうです。誘われた時、二人は大熊君の情熱に二つ返事でOKしたそうです。

なかでも今回はサンフランシスコで起業することにあたり、そもそもの起業案を持ち出したCEOである大熊さんに起業に至るまでの経緯について話を伺いましたので、そちらをご紹介していきたいと思います。

なぜ起業しようと思ったのか?

彼はもともとビジネスに興味があったらしく、祖父が工業デザイナー、両親が建築家(デザイン路線)でアイデアをベースとして仕事をする関係上、何かを考えるのが好きだったので、アイデアを用いて何かを形に残したいと小さい頃から思っていたそうです。しかし、自分には絵画や音楽等の芸術的な才能はないと判断。そこで芸術的な観点なしにビジネスの場で自らのアイデアを如何に活躍させられるかを考えていた所、起業やコンサルティング等のビジネスを通じたらアイデアを形にするということができるのではないかということに気が付きました。考えるという発想の観点では芸術と変わりはないのではないかと考え、自分の興味方向とやりたいことの方向性を合わせ、起業をすることを目標に設定したそうです。
そして、その目標のために大学もより実践的なコンサルティングを学べるという点で慶應義塾大学総合政策学部(SFC)への入学を決めました。そして、大手外資系コンサルティング会社であるMcKinsey & Company, Inc.にコネクションを持つ教授のゼミに入ることができ、彼の下でビジネス経験を積みました。その後、そこで培われた考え方を用い、Adidas主催のビジネスコンテストへ出場し、その大会で優勝したプランを実際のビジネスの場で試してみたいと思い、起業することを決意したそうです。しかしながら、起業するためにはそれに注力するための時間が必要となってきます。彼は起業するアイデアは持っていて、ある程度のビジネスの知識もついていたことから、後はそれを実行する機会を探していました。集中して事業を考える時間を注ぐことができる機会を探していた所、留学という選択肢に出会ったのです。留学中は授業以外の課外活動の時間が比較的多く、起業するためにはこの上ない機会を得ることができると思ったそうです。

アメリカで起業するということ

ここでは、アメリカで起業することについて、メリットとデメリットに触れてみたいと思います。

メリット:起業をする際、日本は完成した商品やサービスを市場に反映させる傾向にあります。一方、アメリカは中途半端であってもとりあえず市場にプロダクトを反映させ、洗練させていく傾向にあります。彼らの会社にはアメリカ的な起業が向いているのではないかと感じ、アメリカで留学中の起業を決めました。例えば、完璧主義である日本では完成されたプロダクトを出さなければならないために1000万円の投資をした場合、それが売れなかった時は利益が0円になってしまいますが、アメリカではApple等がそうであるように最初に100万円でプロダクトを作ったとしてもそれをアップデートしていける。市場の反応を見て、反応が良好の場合はさらに200万円投資したりすることが可能となる。このようにどちらが良いかを考えた場合、アメリカ的な起業の仕方の方が自分達の会社には合っていると考えました。

デメリット:ビザの関係上、彼らの会社が展開する市場は日本になっています。アメリカを市場にするとドルで収益が入って来る為、移民法に引っかかってしまうという法律上大きな問題があるのです。アメリカで会社を登記し、日本をマーケットにすることも可能でしたが、それではアメリカと日本、両方の税理士に頼まなくてはいけないという税制面での管理が困難なことなど、アメリカ市場でのリスクを考慮すると日本市場の方が良いのではないかという結論に至りました。
また、留学上日本で展開するデメリットは、顧客に直接アプローチしづらい点。日本では最近多くの若者がビジネスを立ち上げて、学生起業家と呼ばれている人が多いですが、実際に若いうちから立ち上げたベンチャー企業は支援されやすいという利点があります。既に成功しているベンチャー企業はリスクを知っているからリスクを取って起業してくるベンチャー企業のことを歓迎するのだそうです。これは大学生であるという利点であり、社会人になってからだと社会人から社会人にアドバイスを求めたりアプローチしたりするのは難しかったりします。大学の教授も同じです。大学生のうちは学内の教授の連絡先に簡単にアクセスできますが、社会人になってからではアクセスできず、話を聞いてくれるかもわかりません。このように日本にいれば、ベンチャー企業や教授等と直接やり取りすることができますが、アメリカにいてはそれが困難であるという事実があります。これが留学している上で日本を市場とすることのデメリットとなっていますが、今はSNS上でもやり取りができる時代なので直接アプローチできないのはデメリットではあるけれども、それを悲観的に見る必要はないと考えているそうです。

今回は起業することに至った経緯についてご紹介しました。次回はA-Nexusのサービスに焦点を当ててお伝えします。

本気のビジネス留学、学び働く1年間