アメリカ人を笑わせたい!留学生がアメリカでスタンドアップコメディに挑戦

日本のコメディアンでも、アメリカ人を笑わせるのは難しいと聞きます。なぜなら、日本とアメリカではコメディスタイルが異なるから。万人受けするネタが多い日本のお笑いと違って、アメリカの笑いは政治や時事を皮肉ることも多く、笑いを理解するためにある程度の知識も求められます。

そんなアメリカで、コメディの舞台に立ってアメリカ人を笑わそうとした留学生がいます。「笑い」を通して日米の文化の違いを洞察し、言葉の壁を越えて自らの可能性を広げた中野友博さんに話を伺いました。

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中野友博
早稲田大学大学院修士一年。機械科学専攻。2015年9月から2016年8月まで、IBP ビジネス留学プログラムを通してシアトルにあるベルビュー・カレッジに留学。「日本の航空機産業を牽引する人間になる」という夢を追いかけるため、ボーイング社の拠点があるシアトルで、アメリカ人と一緒に学部授業が取られるベルビュー・カレッジを選んだ。学部授業ではビジネス以外に、マーケティングや心理学も受講。課外活動では、リーダーシッププログラムを提供している団体でのインターンシップの他、ワシントン大学ラグビー部のコーチやベルビュー・カレッジの日本語授業の助手などを経験した。留学のテーマは「挑戦」。

Q. アメリカでコメディをしようと思ったきっかけは?

インターンシップ先でお客さんに対して自己紹介をしたことが何度かあったのですが、一所懸命に自己紹介をしたにも関わらず、数分後に会っても私の名前や専攻などを何も覚えてもらっていなくてショックを受けたことがありました。一方で、インターンシップをしている団体の設立者とお会いした時に、たまたま発したジョークがウケたこともありました。その方にはその後とても良くしてもらい、良い人間関係が構築できました。その経験を通して、「アメリカ人には、まずは話を聞く価値のある人間であることを示す必要がある」と感じました。

それまでは「自分の強みを活かす」ということに重きを置いていましたが、自分の弱みを強みにした経験はなかったので、あえてコメディをやってみようと思いました。アジア人であること、日本人であることをコンプレックスに思ったことも何度かあったので、その立場を強みにする逆転の発想はお笑いにはピッタリでした。

Q. 日本とアメリカのコメディの違いはどのように感じますか?

私自身、もともと寝る前に必ず15分はお笑いを見てから寝るほどお笑いが好きで、目立ちたがり屋の性格でもあり、高校生の時から同級生とコンビを組んで漫才をしていました。しかし、当時は相方がネタを作って私がネタを加えていくスタイルだったので、一から自分だけで笑いを取るのはコンビの時とは全く違いました。

日本のピン芸人は、いわゆる「フリップ芸」と呼ばれる、画用紙にコミカルな絵を描いてトークで笑わせるスタイルや、歌を交えるスタイルなど、一風変わった芸風が目立ちます。一方でアメリカのスタンドアップ・コメディアンは、どちらかというとストーリーを話してオチで笑わせるといったスタイルです。日本の芸人さんで言えば、綾小路きみまろさんが近いかもしれません。

また、アメリカにはツッコミの文化がありません。日常会話でも、"The funny thing is..." というように、聞いている人に分かりやすく笑いを伝えることでツッコミ役を省いています。話している時の表情も、日本ではネタに集中し、芸人がお客さんと同じように笑うということをしませんが、アメリカではお客さんをリラックスさせるためにコメディアンも一緒に笑います。それによって、一体感が生まれています。

Q.実際にどのような準備をしましたか?

マイク一本で笑いを取るスタンドアップ・コメディは、日本では珍しいです。私は日本ではツッコミ役だったので、自分でボケて笑いを取る研究から始めました。

また、以前『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』という番組で、ニューヨークで活躍するコメディアンがいたことを思い出し、その人のネタやインタビュー記事を見て「なぜウケているのか」を研究しました。その他にも、アメリカにいる日本やアジアのコメディアンなどを広く研究しました。

そこで気づいたのは、ステレオタイプや偏見を逆手に取っているコメディアンが多いことです。自分も「アジア人や日本人であることを活かす」ことにフォーカスしました。「日本人やアジア人はどのように一般的に捉えられているのか」について改めて考えさせられるきっかけにもなりました。

Q. ネタ作りはどのように進めましたか?

日常を観察し、感じた疑問などをメモしておいて、それに「自分が日本人であること」を組み合わせてネタを構築していきました。いわゆる「あるある!」ネタの応用です。

例)バスの中で大きい声で電話をする人が多い→日本なら誰も話していない。存在感を消すんだ。忍者の練習としてね。

このスタイルは、前述のインターンシップをしている団体の設立者に会った時に思いついたものです。午後8時頃まで仕事をしていた時に、その人が来て「何してるの?」と聞かれたので、「仕事です。日本人ですので」と答えたところ、それがウケたことがきっかけです。彼が「日本人は仕事に対して熱心」というステレオタイプを理解していたことが、ウケた要因だと悟りました。

アメリカのコメディアンは擬音の真似をしたり、描写をしたりすることも多いので、それもネタに盛り込みました。たとえばアメリカ人と日常会話をしていると、特に女性はびっくりするほど細かく描写します。

例)「その時彼女はこう言ったのよ。(声色を変えて)『○○○』ってね」

そこで自分も「日本人ならこうするよね」ということをジェスチャーで大げさに描写するネタを取り入れました。

でも一番気を遣ったのは、「わかりやすくする」ことです。言い間違えが起きそうな言葉、発音が難しい単語などが含まれているネタは、どんなに面白くなりそうでも取り除きました。一度でも「こいつ何言っているんだ?」とお客さんが思ってしまったら、信頼関係が壊れてしまうことを恐れました。

Q. 当日まではどのように準備しましたか?

自分で面白いと思ったネタは、インターンシップ先の人に話したりして、「面白いかどうか」「自分の感覚は間違っていないか」などを確認しました。

また、ショーをする2週間前に会場の下見もしました。日本人であるということを活かすネタだったので、会場のお客さんにおける日本人・アジア人の割合や、会場の雰囲気を確かめようと思いました。すると、約60人のお客さんに対してコメディアンは約40人で、アジア人はゼロ。黒人も1人いるだけで、他は全員白人でした。勿論全員英語はネイティブです。彼らの中でウケている人の行動や話し方を参考にしながら、ネタを言うタイミングや口調を最終調整しました。

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Q. 当日はどのような感じでしたか?

当日は、サインアップしたにも関わらずパフォーマンスリストに名前が記載されず、ショーの取りまとめをしている人になんとかパフォーマンスさせてもらえるよう交渉する羽目になりました。するといきなり、トリでシークレットゲストとして急にステージに呼ばれ、パフォーマンスすることに。緊張しましたが、ここまで来たら後はやりきるのみです。

ショーの最中から感じたことですが、約40人のコメディアンの中で、トップレベルにウケることができました。笑い声や、口笛なども起こりました。トリとして出てきたアジア人にみんな注目してくれたようでした。パフォーマンスを終えるとちょっとした人だかりが出来て、賞賛のあいさつをもらい、日本とアメリカの芸風の違いなどを聞かれました。コメディアンにとっても私のネタは面白かったようです。すぐに友達ができて、「日本に帰らずアメリカで芸人を続けろ」とも言ってもらえました。

Q. アメリカでスタンドアップ・コメディに挑戦してみて

留学中、ワシントン大学ラグビー部のコーチを通してチームとして何かをやり遂げる経験はしましたが、誰の力も借りずに自分で何かをやり遂げる経験もしたいと思い、今回挑戦したのがコメディでした。しかし、誰にも相談せず、友達も誰も呼ばず、一人でコメディショーに参加して気づいたのは、芸人は一人ではできないということ。お客さんがいて、芸人がいて、初めてお笑いは完成します。笑わせる人と笑う人の間に信頼関係があり、「この人は面白い!」と感じてもらうことによって、そこからお笑いが始まるということを改めて実感しました。

※中野さんが参加した IBP ビジネス留学プログラムはこちら:
http://www.iccworld.co.jp/ibp/

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